と思ったら、弱弱しく笑い始めた。

「やっぱりひなたちゃんはかっこいいや」
「そうかな?」
「ひなたちゃんが気にする相手って……初恋の人?」

 近江君はためらいながらも聞いてきた。
 私は答えに迷う。

「……ごめん、変なこと聞いた」

 近江君が少し前に行ったせいで、どんな表情をしているのかわからなかった。
 答えたほうがよかったのかとも思ってしまうけど、本当にそう思っているのか、自分でもよくわかってなかった。

「アキラ」

 そのとき、茶髪の女子高生が私の横を走り抜けていった。

 彼女が口にした名前があの人と同じ名前で、思わず振り向いてしまった。

「……両手にあるそれはなんだ」
「これ? クレープ。おいしそうでしょう?」
「甘いのは……」

 彼が私に気付いた。
 私はというと、振り向いた時点で足を止め、固まっていた。

「なんでここに……」
「ちょっとアキラ、この真面目そうな子と知り合いなの?」

 ブレザーをかっこよく着崩した天形と、おしゃれでかわいい彼女さん。

 いたたまれない。

 思い出が美化されているだけだと思ってたけど、実際に目の前にするとやっぱりかっこいい。
 緊張する。

「あれ、天形じゃん! 久しぶりだな」

 すると空気を壊すように、聖が間に入ってきた。