「近江はなんのために自分を偽って、演じてるの」

 沙奈ちゃんは回りくどいことが嫌いなのか、単刀直入に言った。
 近江君だけでなく、私も聖も驚いた。

「そうだな……周りと自分のため、かな」

 近江君の答えを聞いて、沙奈ちゃんは黙り込んでしまった。

 また文句を言うのでは、と妙な緊張を胸に、沙奈ちゃんの反応を待つ。

「……ごめん」

 小さな声だったけど、沙奈ちゃんはたしかに謝った。

「近江のこと勘違いしてた。人気が欲しくて演技してるのかと思ってた」
「……素直なんだね」

 沙奈ちゃんの言葉や態度に、近江君はそうこぼした。

「悪いことをしたって認められない、謝れない人間にはなりたくないだけ」

 それってなかなか出来ないことだと思うけど、はっきりとそう言う沙奈ちゃんが、かっこよく見えた。

「一件落着?」

 こっそり横に来た聖が、私にだけ聞こえるような小声で聞いてきた。

「みたいだね」

 完全に仲が良くなったようには見えないけど、それでも誤解がなくなって、見ていて微笑ましいような感じだった。

「これで楽しくアイスが食べられるな」
「思いついたのがアイスだったの。そんなにからかわないでよ」

 私は聖の肩を軽く叩いた。