沙奈ちゃんは気付いてたみたいで、ごみを捨てに席を立った。
 お昼を食べ終えた聖は、沙奈ちゃんがいなくなっても口を開こうとしない。

「こんにちは、近江君」
「こんにちは。さっそくなんだけど、今日の放課後暇?」

 爽やかな笑顔で、お誘いを。
 これを受けたら私は近江ファンに目をつけられるんじゃないの……?

 そう思ったけど、今こうして近江君と話している状況を睨んでいる人がいなかった。
 むしろ、近江君の笑顔に見とれている人がほとんどだった。

 体育祭のときのあの悲鳴は何だったのか。
 なんて、そんなことはどうでもいいか。

「暇だよ」
「だからって、近江と二人で帰らせたりしないからね」

 戻って来た沙奈ちゃんが、後ろから私を抱きしめた。

「どうして?」
「私でもひなたと一緒に帰ったり、寄り道したりしてないから」

 沙奈ちゃんとは変える方向が真逆だから、いつも学校を出てすぐに別れてしまう。
 私も、ちょっと沙奈ちゃんと遊んで帰りたいって思ってたりする。

「じゃあ、四人で帰ろう」
「四人?」

 近江君の視線が聖に向く。
 その視線に気付いた聖が、戸惑いの表情を見せる。

「俺も? なんで?」
「バランス?」

 自分で提案したはずなのに、近江君は疑問符を付けた。