だから、沙奈ちゃんにはそのままでいてほしいな、なんて。

「私が聞きたいのは内容じゃなくて。一番のお気に入りが更新されたかってこと」

 ……なんだ、そういうことか。

 私は首を横に振る。

「まだ初めて読んだ小説が好きなの?」
「あれは衝撃的だった……今の私を作ってるのはあの作品だからね。嫌いにはなれないよ」

 私を本の世界に引き込んだのは、小学三年のときに読んだ、ミステリもの。
 その世界に引き込まれ、夢中になった。

 もっと面白い作品に出会えるんじゃないかと思って、今でもいろんな本を読んでる。

「ドラマは?」
「あの恋愛ドラマはいいよね」
「漫画は?」
「ファンタジーもの。話もいいんだけど、なにより絵がきれいなの」

 質問をしてきた沙奈ちゃんは、私の答えを聞くや否や、ため息をついた。

「本当、一途だねえ」

 苦笑するしかない。

「……それで? 初恋の人は忘れられない?」

 沙奈ちゃんの顔を見たのち、俯く。

「間違えた。忘れられないんじゃなくて、まだ好きなんだっけ」
「ちょ、沙奈ちゃん……」

 沙奈ちゃんは意地悪そうに笑う。

「本当にもう連絡取れないの?」
「私と彼、共通の友達がいないからね」

 すると、誰かが頭にのしかかった。