「つまりー! イケメンは失格! ざまあ!」

 ……こら。

 さらに笑いが起こっているから、心の中で突っ込んでおこう。

 私は近江君を見る。
 近江君は小さく口を動かした。

 ごめんね。

 あってるかわからないけど、私はそう言ってるように思った。

 そして借り物競争は終わった。

 私は近江君のところに向かう。

「近江君!」
「ひなたちゃん。さっきはごめんね、僕が勘違いしたせいで」
「ううん。あの書き方だと勘違いもしちゃうよ」

 声をかけたのはいいけど、話すこと考えてなかった。

「……なに?」

 何を話そうか考えていたら、近江君がじっと私の顔を見ていた。

「ひなたちゃんはほかの女子と違うんだね」

 綺麗な顔が近付いてくるから、緊張して身動きが取れなくなる。
 ゆっくりと近江君の手が上がり、私の頬に触れそうになる。
 私はつい、目を閉じた。

「ひなたちゃんは一途だから」

 すると、後ろから抱きつかれた。
 沙奈ちゃんだ。

「一途?」
「初恋相手をずっと想ってるの。だから、エセ王子には騙されない」

 間違ってないけど、そんなはっきり言わなくても。
 近江君も戸惑ってるみたいだし。

「矢野君と付き合ってるんじゃないの?」
「聖は幼なじみだよ?」