聖は気を使ってくれたのか、先に帰っていった

 天形と二人きりになるけど、無言の時間が流れる。

「……大学、どう?」
「その質問がどうなの。まったく、今日の同窓会も参加しないでさ。その格好、みんなに見せてあげたらよかったのに」

 天形とは、ずっと友達のようで恋人のような関係を続けていた。
 こうして会いに来たということは、きっとあの日の約束を果たしに来たんだろう。

 だから、少し酔ったフリをして緊張を誤魔化す。

「……ひなた」

 私の冗談なんて通じなくて、天形は初めて私の名前を呼んでくれた。
 暗いはずなのに、やけにはっきりと天形の顔が見える。

「本当に長い間待たせて、ごめん」

 天形は私を抱きしめた。
 あの日とは全く違って、流れるように天形の腕の中に収まってしまった。

「俺が絶対幸せにするから、一緒に暮らそう」

 てっきり付き合おう、と言われると思っていたから、返事するまで間が空いた。

「……もちろん」

 そして約束通り、天形はそっと私の唇に触れた。





 それから二年ほど同棲をして、私たちは籍を入れた。


 これは、傷つき、傷つけ、迷い、間違えた私たちの青春時代の話。


 晃との結婚生活は、また別のお話。