「……わかった。そのかわり、あとで俺の願い聞いてくれよ?」
「私に出来ることならなんでもどーぞ?」

 笑い返すと、聖は沙奈ちゃんのところに行った。
 遠くからでもわかる沙奈ちゃんの嫌そうな顔に、申しわけないことをしたな……と思いながら、私は近江君のところに行く。

「近江君、これでいいかな?」

 声をかけても、反応がない。

「近江君?」
「……どうして君は僕とゴールしようと? さっきあの子が言ってたみたいに、あることないこと言われるかもしれないのに」
「そのお題でも何か言われるの?」

 はちまき交換は確か、そうしたら優勝できるっていうジンクスだったような……

「……男女でゴールってところで言われると思うけど」

 なるほど、それは思いつかなかった。でも。

「私なら大丈夫だよ。近江君こそ、私とゴールして大丈夫?」
「それは問題ない」
「じゃあいいじゃん。行こ?」

 私は近江君の背中を押し、ゴールに向かう。

「ありがとう、ひなたちゃん」

 急に名前を呼ばれて、私は近江君から手を離す。
 近江君は不思議そうに振り向いた。

「名前……矢野君が呼んでたから……違った?」
「いや、えっと、あってるけど……」

 なかなか男子に名前を呼ばれることなんてないから、照れる。