どうすればいいか悩んでいたら、夏希が間に割り込んできた。

「名乗らないで喧嘩売るのはどうかと思うけど?」

 夏希はこの子のことを知らないから、ただ単に私が一方的に絡まれていると思ったらしい。

「私、篠田泉。アキラの彼女」

 彼女の名前、そして天形との関係を知り、私は言葉を失った。

「アキラって誰」

 だけど、夏希のそれでなかったことにされてしまった。

「夏希、天形の下の名前、晃だよ」
「ふーん……って、え?」

 初めは興味なさそうに言ったのに、状況を理解したのか、夏希は拍子抜けした声を出した。

 そしてじっくりと篠田さんの顔を見る。

「この美少女ギャルが天形の彼女!?」
「ちげーよ」

 変なテンションの夏希に、冷静に否定したのは、天形だった。

 白ベースで真ん中に大きくドクロがあるTシャツを着、首にタオルをかけている。
 まるで、屋台でもやるかのよう。

「もう、アキラ! なんでそんなに私を彼女って認めてくれないの!?」
「泉こそ、なんでそんなに彼女だって言い張るんだよ」

 二人のやり取りを見ていられなくて、私は顔を逸らし、目を瞑る。
 本当は耳まで塞ぎたかったけど、会話の内容が気になって出来なかった。

「何回告白しても、アキラが彼女にしてくれないから、周りから固めていく作戦だもん」