「どれくらいかかる?」

 夏希はため息混じりに言った。
 何か急ぎの用があるわけでもないから、夏希が折れた。
 もしくは、説得が面倒になったとか。

「二十分!」

 沙奈ちゃんは漫画が読めることがよほど嬉しいのか、勢いよく答えた。

「ひなたは?」

 曖昧だったとはいえ、沙奈ちゃんに賛同したことに間違いはないから、夏希に聞かれた。

「私はいいよ。家に帰って読む」
「それなら……沙奈はそこにあるベンチで読んでて。ひなた、ちょっと買い物に付き合ってくれない?」

 夏希は近くにあるベンチを指さし、そして私を誘ってきた。
 沙奈ちゃんは不服そうにする。

「扱いが違いすぎない? 差別だ」
「沙奈が読み終わるまで大人しく待ってろって言うの? 冗談でしょ」

 沙奈ちゃんは言い返せなくなってしまった。
 肩を落としてベンチまで歩き、ついさっき買った漫画を読み始めた。

「よし、二十分で戻るよ」

 私は夏希に腕を引かれ、食品売り場に来た。
 夏希は迷うことなく進み、ジュースとグミを取った。

 五分もしない買い物だ。

 私も何か買おうとお菓子を見に行ったら、涙目でキョロキョロしている女の子がいた。
 その子は私に気付くと、真っ直ぐ私を見てきた。

「冬花ちゃん?」