「……聖は凄いな」

 それは思わずこぼれた言葉だった。
 自分でも、こんなこと言うつもりはなかった。
 凄い、だなんて私が言うなって話だ。

「ひなたが天形と付き合いたいって言うなら、協力する。でも、真剣じゃないなら、一人で頑張ってもらう」

 それは意地悪で言っているわけではないと、すぐにわかった。
 夏希は真っ直ぐ私の目を見る。
 その鋭い瞳から、私は目がそらせない。

 当然、真剣に天形と付き合いたいって思ってる。
 友達のままなんて、多分無理だ。
 天形に彼女が出来たって言われたとき、素直に祝える自信がない。

 でも、今まで口出しせず見守って、と言ってたくせに、こういうときだけ協力してほしいだなんて、都合がよすぎる。

「あー……ごめん。言い方間違えたね。真剣に天形を想っていないなら、天形は諦めて」

 私が悩んでいる原因を察してくれたらしく、夏希は言い換えた。

 これには、きちんと答えられる。

「真剣だよ。友達でいたいなんて、思ってない」

 すると、夏希は優しく微笑みかけてくれた。
 まるで、姉に見守られているような気分になる。

「わかった。応援するよ」
「私も、応援はしてるー」

 そう言う沙奈ちゃんの手の上には、折り紙のバラが乗っている。