聖は私の頭を二回叩き、離れていった。
私はそっと聖の背中を眺める。


校門まで行くと、どこに隠れていたのか、天形が出てきた。


聖と天形は少し話すと、天形が先に帰っていった。
聖は振り向き、手を振ってから校門を抜けていった。


私はゆっくりと外に出る。


自分がいかにダメな人間なのかと思うと、ため息をつかずにはいられない。


「ため息ついたら幸せが逃げるって知ってるか?」


校門を通り過ぎ、曲がった瞬間下からそんな声が聞こえてきた。


私は耳を疑う。
きっと空耳だろう、なんて思いながら、恐る恐る下を見る。


「天形……!?なんで、帰ったんじゃ……」


天形は不良座りをして、私を見上げている。
私は地味に後ずさり、立ち上がる天形から距離をとる。


「そのつもりだったんだけど、矢野が今日のうちに話したほうがいいから、隠れて待てって」


聖……!
言ってたこととやってること、真逆……!


聖への怒りはもちろんあるけど、それ以上に今目の前に天形がいることへの動揺のほうが強かった。


「久しぶり」
「ひ、久しぶり……」


私は声を絞り出す。
心臓がずっとうるさい。


酷い緊張と恐怖から、私は天形の顔も見れない。