「矢野だって残念だよね?」
「俺に振るなよ……」

 また二人の世界。
 なんで聖のほうが沙奈ちゃんと仲良いんだろう。

「……沙奈ちゃんは渡さないもん」

 私は沙奈ちゃんに抱きつき、聖を睨む。
 聖は苦笑しながら、私の頭に手を置いた。

「取らねえよ」

 そしてそのまま、本部テントに向かってしまった。

「ひなたちゃん、ヤキモチ?」
「う……だ、だって……沙奈ちゃんは、私の友達だもん。聖なんかに渡さないもん」

 沙奈ちゃんはかなり強めの力で抱き返してきた。

「ひなたちゃんの愛情は私が独り占め……じゃなかった。私と初恋君のものだね」

 ……そこで入れてこなくていいから。

 そしてどんどん体育祭のプログラムが進んでいった。
 昼休憩が終わると、まず最初は応援合戦。
 その次が借り物競争だった。

「あ、聖だ」

 準備している聖に対して応援しようとしたら、ほかの女子に私の声をかき消されてしまった。

「うーわ。エセ王子」
「沙奈ちゃん、言い方……」

 どうやら近江君も同じ組で走るみたい。

 それにしても、沙奈ちゃんって本当に近江君が苦手なんだな……

 そしてピストルが鳴った。
 一斉にお題が書かれた紙に向かう。

 それぞれそのお題を見て、散らばっていく。