私は逆に、その手が邪魔だと、顔から離す。


「聖は天形のこと、嫌いなんだと思ってた」
「嫌いだよ。ひなたを狙う男はみーんな敵」


笑顔で言うけど、目が笑っていない。


そんなことを本気で言う聖がおかしくて、私はつられるように笑った。


「私を好きな人、そんなたくさんいないよ。でも、なんで敵に塩を送るようなことを?」
「だって、アイツが土俵に上がらなきゃ勝負の仕様がないだろ」


言葉に困る。


土俵ってなに。
勝負ってなに。


……いや、待って。
土俵に上がるってことは……聖が天形と勝負するってことは……


なんて、都合よく考えすぎ。


「ねえ、聖……天形が話そうとしてること、知ってるんじゃない?」


ちょっとでも嘘をついている仕草をしないか、私は聖を見つめる。


「知らないよ。天形と話したのは話したけど、ひなたに何を言おうとしているかは、本当に知らない」


嘘をついているようには見えない。
ということは、本当に知らないんだ。


「……今日は会わない?」


その質問で、天形がまだここにいるんだとわかった。


私は首を縦に振る。


「そっか、わかった。天形に言っとくよ。でも、今日は会わなくてもいいけど、ちゃんと話す時間、作れよ?ひなただけじゃなく、俺も天形も前に進めないんだから」