俺が笑っているうちに天形のところに走っていった強面の先生が天形を捕まえている。
案の定、イヤフォンを外した天形は先生を睨み返している。


こういうところが勘違いを生むってわかんないあたり、やっぱりアホだな。


俺は二人の間に入る。


「どうした、矢野」


俺の登場に、先生の表情が柔らかくなる。


「すみません、こいつ俺の友達で。ちょっと目つきが悪いんで勘違いされやすいんです」


先生は俺に疑いの目を向け、さらに後ろの天形を睨む。
再び俺に視線が戻される。


「矢野……こういうことはあまり言いたくないが、友達は選べよ?」
「やめてくださいよ、先生。こいつ、こう見えてメンタル弱いんですから。下手に刺激したら死にます」


おどけて言うと、後ろから頭を軽く殴られた。


「死ぬわけねえだろ」


そう言う天形の顔は赤いように見える。


男の照れ顔は気持ち悪いな。


「ダメージ抜群じゃん」
「うるせえ」


悪態をつく天形の横腹を肘でつつく。


「二人が仲がいいのはわかったが、待ち合わせ場所は考えてくれ。ほかの生徒からまた苦情が来るからな」
「はい、すみませんでした」


そして先生は戻っていった。
集まっていた生徒も、解散し始める。