〈それヤバい。やめようよ。霊より怖い〉
〈うん、霊を脅してどうするの? それより方法を考えなきゃ〉

それもそうかと、宙を見上げた――眩しい!

ついこの間、夏休みに入ったと喜んでいたのに、もう八月も半ば。気のせいか空が高くなったように感じる。もうすぐ秋か……。

〈何か、黄昏(たそが)れてない? で、どうするの?〉

シオが足に纏わり付く。

「――葬儀はいつ?」
〈確か、八月十五日にお寺でやるって言ってたような……〉

霊は日時に弱いらしい。たいていこんな反応だ。だから人の迷惑も(かえり)みず、昼夜問わずいつ何時でも現われるのだろう。

「今日は十四日だから……通夜はどこでするって?」
〈家。お金がないから、一番安いお得パックの家族葬しかできない、って母ちゃん泣いてた〉

それを聞き、改めて母親のためにも青年を必ず成仏させようと固く心に誓う。

〈それって今、右肩上がりの“得々安らぎパック”だよね?〉

シオが思い出したように言う。

〈高齢化社会で老人は多いものの、葬儀屋家業も楽じゃないって〉

現代に生きる老人はとてもシビアだ。ひと昔前のように、『葬儀の大きさが家の沽券(こけん)に関わる』なんてことは思わなくなった。それよりも、『自分らしく旅立ち、子や孫に少しでも財産を遺したい』と思っている人の方が多い、と以前テレビでコメンテーターが言っていた。

それもこれも先の見えない世の中だからそうだ。