――付喪神。
――長い、ながい、永い年月を人から慈しまれたモノに神格が宿るという日本古来の呪術的価値観。
――”我”は、その価値観のもとに開発された、次世代の神だった。
――しかし、それは長い年月そそがれた愛着というプロセスを抜きにして、ただただその神格を奴隷のように扱い便利な道具として使い捨てる代物で。
――そのために、自分たちには個性や自我などというものは発露しないように設計されているようだった。
――そこには、古きものへの愛着も何もあったものじゃない。
――なんという皮肉なんだろうと、覚醒したばかりの意識の中で思った。
――それでも自分たちはひどく高級品で。個人利用をしようなんていう者はほとんどいないようで。
――そんな折に出会った、”我”の契約者はひどく美しいヒトだった。
感情も感動もないはずのシステムたる”我”に。
美しいと、暴力的に思わせるような。
しいて言えば、神々しさをまとったヒトだった。
――仮想神格である自分よりも、よっぽど。
――その、神様のような人間の、最期の願いを、”我”は抱きしめている。