弱音を吐く頼に、かける言葉が見つからなかった。悩んだ結果、もう一度同じところを叩いた。


「まあ、関わらないっていう選択はするなよ」
「どうして?」


 立ち上がって去っていく真樹の背中に、問いかける。


「あの子と離れ離れになったときのお前は抜け殻みたいで、見ていられないからだよ」


 真樹は背中を向けたまま左手を振り、木の中に消えていった。


 頼は街の明かりをぼんやりと眺める。


「そんなこと言われても……紫乃はここに来ないし、家に行ったらお母さんに拒絶されるんだよ? 心の傷が消えていないっていうのが正しかったら、いつか思い出させてしまうってことで……まったく、難しいこと言うよなあ」


 街の灯りに負けそうな星の輝きをじっと見つめ、ぼやく。


「私は関わらないほうがいいと思うぞ。またあの娘と関わって、力を使えば、今度こそお前は消えてしまう」


 子供のような見た目をした女の子が、浮いて出て来た。だが、頼は驚かない。


 彼女は、頼の知り合いのあやかしだ。見た目は人間と変わらないが、頼も真樹も彼女と同じあやかしだから、人の記憶を操作したり、木の中に消えたりしたのだ。


星南(せな)さん……」
「私は人間のせいでお前が消えるのは嫌だぞ」