翌日、紫乃はあの場所に行かなかった。また頼に出会ってしまうのではないかと思うと、足が向かなかった。


 雨の日以外は毎日のように通っていたせいか、まっすぐ帰宅していることに違和感があった。


「紫乃、おかえり。今日は早いのね?」
「ただいま。今日の課題、多いから……」


 母親の有里(ゆり)に返事をしながら、階段を上がる。


 課題が多いというのは、もちろん嘘だ。自室に入ると、カバンをベッドの上に置き、制服のままベランダに出る。


 あの高台ほど綺麗な夕焼け空は見ることができないけれど、空のグラデーションを眺める。ゆっくりと闇に染まっていく。


 家の灯りや街灯が目立つようになってくると、部屋に戻る。ドアの横にある電気のスイッチを押し、カーテンを閉めた。


 勉強机に向かい、課題を広げたとき、インターフォンが鳴った。有里が返事をする声が聞こえる。


 しばらくすると、ドアをノックする音がした。紫乃はシャーペンを置き、ドアを開ける。


「紫乃、大丈夫なの!?」


 開けたと同時に、有里に両肩を掴まれた。状況が飲み込めず、紫乃は首を傾げる。


 有里は泣きそうな表情で安堵のため息をついた。


「お母さん、どうしたの……?」