そして宣言通り、紫乃はまた高台に来ていた。


 紫乃と話すことを楽しいと思い始めた頼は、人間のふりをするために、多くの嘘を重ねた。


「お前、あの子とずっと今の関係を続ける気か?」


 そんなある日、真樹に聞かれた。


「……ダメ?」
「ダメもなにも、無理だろ。人間とあやかしじゃ、生きていられる時間も違う。恋愛なんてできない」


 返す言葉もなかった。それでも頼は、紫乃と一緒にいたいと思った。


 眉尻を下げる頼を見て、諦める気がないのだと思った真樹は、ため息をついた。


「お前の嘘は、いつかバレるぞ」


 すると、背後から何かを落とすような音がした。まさかと思って振り返ると、紫乃が立っていた。


「頼君……私に、嘘ついてたんだね……」


 それだけを呟くと、落としたカバンを持って逃げた。


「紫乃!」


 頼は急いで紫乃の背中を追う。


 すぐに追いつくことが出来た頼は、紫乃の腕を掴む。


「離してよ……私を騙してたんでしょ?」


 泣きながら言う紫乃に、従うことしか出来なかった。自由になった紫乃は、まっすぐ家に帰った。


 高台に戻った頼は、魂が抜けたようだった。


「元気がないな、頼。どうした?」


 夜になり、星南が現れた。頼は星南に紫乃のことを話した。