彼女は何度も、そこに足を運んでいた。一般的に“つらい”と言われる現実から逃げるため――ではなかった。彼女にとってそれは習慣のようなものだった。
ただなんとなく、そこに向かっていた。そこに行ってもとくにすることはない。それでも、行かずにはいられなかった。
そこは街を見渡すことのできる、小さな公園のような高台だった。遊具はなく、崖から落ちないためにある柵の近くに、ベンチが一つあるだけだった。
そこに座って日が沈んでいくさまを眺めるのもまた、彼女の日常だった。
茜色の夕日が彼女の頬を照らし、落ちていく。
色が消えたとき、彼女は重い腰を上げる。ゆっくりと高台から降りる場のほうを向いた。
しかしその出入口に向かう途中のそばにある大きな木の根元に、座って誰かが足を伸ばして座っていた。
近付くと、男の人が眠っていることがわかった。
このまま気付かないふりをして帰ろうかと思ったけれど、秋になり、肌寒い夜に放置しておくこともできない。幸い年が近いように見え、彼女は勇気を出して彼の肩に触れようと手を伸ばす。
すると、まだ何もしていないのに、彼は目を開けた。
「うわあ!」
彼女を見るや否や叫ばれ、彼女は彼を起こそうとしたことを後悔した。
ただなんとなく、そこに向かっていた。そこに行ってもとくにすることはない。それでも、行かずにはいられなかった。
そこは街を見渡すことのできる、小さな公園のような高台だった。遊具はなく、崖から落ちないためにある柵の近くに、ベンチが一つあるだけだった。
そこに座って日が沈んでいくさまを眺めるのもまた、彼女の日常だった。
茜色の夕日が彼女の頬を照らし、落ちていく。
色が消えたとき、彼女は重い腰を上げる。ゆっくりと高台から降りる場のほうを向いた。
しかしその出入口に向かう途中のそばにある大きな木の根元に、座って誰かが足を伸ばして座っていた。
近付くと、男の人が眠っていることがわかった。
このまま気付かないふりをして帰ろうかと思ったけれど、秋になり、肌寒い夜に放置しておくこともできない。幸い年が近いように見え、彼女は勇気を出して彼の肩に触れようと手を伸ばす。
すると、まだ何もしていないのに、彼は目を開けた。
「うわあ!」
彼女を見るや否や叫ばれ、彼女は彼を起こそうとしたことを後悔した。