そうなれば、ネットが一番頼りになる。


「便利な世の中になったなあ」
「それと同時に不便ですけどね」


先輩は豆鉄砲を食らった鳩のような顔をする。
それを最後に、俺は運転を再開する。


「若者がそんなこと言うとは」
「歳は関係ありませんよ。相手の顔が見れないのに、コミュニケーションをとることができる。世の中が悪い方向に向かってるとしか思えません」


すると、先輩は笑いだした。


「お前、面白い考え持ってるなあ」
「そうですか?」


そうだよ、と先輩は笑いながら言った。


「そういえば、今回の自殺で発見された遺書。どんなことが書いてあったんですか?」


俺が聞くと、先輩は右手を顎に当てた。


「たしか……『私の命を日本のために。死神様の言う通りに』だったかな」
「ちょ、どう考えてもただの自殺じゃないじゃないですか!先輩、何年刑事やってるんですか!」
「二十年だよ」


さらっと答えがきたけど、論点はそこじゃない。


「だからこそ、無視した。死神様ってなんだ。それで警察が動けるか」
「似た内容の遺書が見つかれば、話は別……ですよね」
「あったとしてもどこも無視してるだろうよ。自殺で処理、遺書は見なかったことに。そんなもんだ」