「この世に絶望した以外にあるか」
「大きく言ってしまえばそうでしょうけど」


でも、きっとそれだけじゃない。
絶望しても、周りの人間に救われることだってある。
自殺したくとも、自ら命を絶つことに恐怖を抱いてできない人だっているだろう。


それなのに、その全てを捨ててしまおうと思わせる何かがあるのではないか、と。
そんな予感がしてならない。


「……その、なんだ。方針は決まってるのか?」
「何がです?」
「捜査だよ。どうするか考えてるのかって聞いてんだ」


耳を疑った。
信号で止まったため、横に座る先輩を見た。
先輩は気まずそうに外を眺めている。


「どうして……」
「不服にも、俺とお前はコンビだ。お前がどう行動するか把握しておく必要がある」
「……手伝ってくれるわけじゃないんですね」
「やりたきゃ勝手にやれ」


言ってることが無茶苦茶のように思えたけど、その言葉がそのときの俺にとって、ものすごく嬉しかった。


「とりあえず、ネットです。ネットやSNSで情報を集めようと思ってます」
「刑事がネットに頼るとは……落ちたもんだな」
「でも、そうするしかないことは、先輩もわかってるのでは?」


全国各地を回ることは出来ない。
協力を要請することも出来ない。