「なるほどねえ。でも、あなたがイライラしてるのはそれだけじゃなさそうね?」


……鋭い。
刑事の勘か。はたまた女の勘か。


まあ、どっちでもいいか。


「少女がこの国に絶望していた。少女の考えとは思えないほど、しっかりとしていた。この国は変わらなすぎなんだ」
「連続自殺事件を引き起こすようなことを考えてたの?」


俺は少女の考えを保科に伝える。
保科は言葉を失っていた。


「十五、六の少女にそんな風に思わせたことにイライラした。少女の意図を無視した自分に腹が立つ」
「……無視したんだ」
「経験ゆえに無視した。死者の悪ふざけだと思った」


自分で言いながら、ただの言い訳だと思った。


「後悔のしすぎもよくないわよ」


保科の言葉に顔を上げると、容赦なく煙をかけられた。


「お前……」
「だってそうでしょ。どれだけ後悔したって、過去には戻れないのよ。だから、後悔して、反省して、同じ過ちを繰り返さない。……なんて、何回も聞いてきたでしょ」
「まあ、な」


保科の言うことは正しい。
だが、この年になるとそう簡単に変われない。
怖いんだ。変化が。変わることが。


「いつの間にこんなに憶病になったんだか……」