俺は慌てて腰元を確認する。
さっきまであった拳銃がない。


……俺のだ。


彼女は初めからこのつもりだったのだろう。
俺が近付くように仕向け、その隙に奪う。


まんまと引っかかってしまった。


彼女は俺の後悔なんて待ってくれない。
奪った拳銃の安全装置を外し、こめかみに当てる。


そして今度こそ、俺の止める言葉よりも先に彼女は引き金を引いた。


夕日で赤く照らされていた川面は、彼女の血で赤く染まっていった。


「うわぁぁぁあああああ!」


後悔に苛まれる。


どうして助けられなかった。


どうして。
どうして。


どうして!


彼女の手から離れた拳銃が流れて、俺の足に当たる。
俺はその拳銃を取り上げる。


ああ、その前に彼女を川から引きあげておかなければ。


俺は最後の力を振り絞って彼女を川辺に寝かせる。


「……ごめん」


それ以外言葉が見つからなかった。


彼女は俺が殺したようなものだ。


刑事の俺が。彼女を。人を。殺した。


「人殺しの刑事なんて、この世に必要ない」


その言葉と同時に、俺は引き金を引いた。