ぐうの音も出ない。
たしかに先輩の言うことは正しい。


それでも、一目で自殺だと決めつけてしまうことが納得いかなかった。


「自殺に見せかけた殺人だってあります」
「お前は推理ドラマの見すぎ。殺人犯がそんな冷静なこと考えるかよ。殺ろうと思って殺る奴が、トリックだのなんだの考えるわけないだろ」


捕まりたくないと思ってそうする奴もいるだろう。


そう思ったけど、言えなかった。


「あー……なんだ。あれか?最近自殺が増えてて、認めたくないってやつか?」
「ち、違います!」


なんとも説得力のない言い方だ。
こんなの、認めているようなものだ。


だが実際、先輩の言う通りだ。
今、全国的に自殺が多発している。
原因は不明。


物騒な世の中だ、と一言で片付けてしまえばそれで終わる。
だが、俺はそう出来なかった。


それこそ、推理小説の読みすぎだと言われてしまうかもしれないが。


俺は、全国的に起こっている自殺がすべて無関係だと思えなかった。
思えないからなんだ、という話だが。


刑事として、これ以上市民の命が失われていくのを黙って見逃すことなどできない。
けれど、真相どころかどうすればいいのかすらもわかっていなかった。