「君は……この国を変えたいのか?」


彼女は首を縦に振る。


高校生がそう思うような世の中なのか。
どうにかして答えを出したいところだが、俺だって二十歳そこらの若者だ。


彼女が納得できる答えなんて持ち合わせていない。


だけど、その答えを出さなければ。


そう思えば思うほど、何も考えられなくなった。


「……ねえ。拳銃、持ってる?」


彼女の質問には耳を疑った。
俺はその言葉を口にした彼女に再び恐怖を感じ、情けなく首を振ることしかできなかった。


「……じゃあいい」


彼女はスクールバックに手を入れた。
彼女の行動に目を奪われた俺は、頭が回っていなかった。


彼女が取り出したのはカッターだ。


刃が出てくる音に、恐怖心を支配されていく。


「なにを……」
「だってお兄さん、何も言わないのに意見だけ否定するから。だから……」


彼女はその先を言わなかった。
言わなかったけど、なんとなくわかった。


彼女はこの世を去るつもりなのだろう。


「ダメだ!」


俺は彼女の手からカッターを取り上げる。
彼女はさっきまでよりも強い憎しみを込めて俺を見た。


「初めからこうすればよかった。みんなに死んでもらうんじゃなくて、私が一番に死んで続いてもらえばよかった」