ただ女子高生が佇んでいるだけかもしれないと思ったが、彼女は俺に気付くと、小さく微笑んだ。


「村田さん……ですね?」


彼女はゆっくりと俺に近付いて言った。
その名を口にするのは、ブログ主しかいない。


間違いなく、彼女が死神だ。


さっきまで感じていたものとは全く別の緊張感。
そして、動揺。


「ふふ、固まってる」


彼女は俺を見て笑う。
その姿からはあの考え、大量自殺を企てているようには思えない。


「驚きました?」


頷くか返事をするかしたいところだが、俺の体は動かなかった。


「村田さんって、真面目な人なんですね。きっちりとした髪型にスーツが物語ってます」


俺の動揺なんかよそに、彼女は楽しそうに話す。


「でも……悲しみより怒りが強い。やっぱり、警察の人なんですね」


今度は悲しそうに笑う。


こんなにころころと表情が変わるのか……
しかしどれも目を奪われる。


「……どうして」


やっと出てきた声は、恐ろしく小さかった。
それでも彼女は笑わず、俺の声に耳を傾けてくれる。


「どうして、自殺者を増やそうとするんですか」


彼女は驚きの表情を見せたと思うと、笑いだした。
……不思議でわからない人だ。