「一軒家で首吊りの遺体が発見された!」


いつもの業務に取り組んでいたら、そんな声が聞こえてきた。
俺はスーツの上着を着、席を立つ。


「熱心なのはいいけど、先輩より先に動くなよ」


後ろからのんびりとした声が聞こえてくる。
俺に話しかけたのは、バディを組んでいる先輩だ。


正直、俺とはウマが合わない。
それなのにコンビを組まされたことは、未だに疑問だ。


「俺が早いんじゃなくて、先輩が遅いんです。早く現場に向かいましょう」


そして俺たちは現場に向かった。


現場はどこにでもある一軒家で、既に野次馬が集まっていた。
その人混みをかき分け、家に入る。


「こりゃ自殺だな」


遺体を見た瞬間、先輩は呟いた。
遺体は階段の手すりの上部にロープの一端を結びつけ、階段を滑るように下に向き、首を締めていた。


「他殺の可能性だってあります」
「この状態で?どうやって殺すってんだ」
「こう……上から押さえつける」


先輩は鼻で笑った。


「もし首絞めて殺害するなら、そもそもこんな面倒な殺り方はしない。お前の言う通り上から押さえつけるのであれば、自分が階段から落ちる可能性がある。下から引っ張ることも可能だが、殺すために引っ張ったなら、足首に跡がつくだろう。でも、この遺体にはそれがない。……これでも殺人か?」