猫の瞳を覗きこみ、ぶう、と頬を膨らませる。

「ふん、別に気にしやしないよ」

 自分の声に返事が急に返ってきたものだから、エリカは一瞬、口をぽかんと開けたまま

(猫がしゃべった!)

と常識的に考えれば有り得ない勘違いを犯した。

「あんた、お利口さん! 猫のくせにしゃべれるのねえ!」

 そう叫んで、エリカは白猫を抱いた両腕を上にあげたり降ろしたりした。

「ばかなことを言うんじゃないよ」

 背後からかけられた老婆の声が、エリカの脳内空想絵図を引き裂いた。

「猫がしゃべれるわけない、そうだろう?」

 振り向けば、今にも顔どうしが触れ合いそうな位置に、背の低いおばあさんが腰を曲げてこちらを睨んでいた。

(魔女!)