「箱庭に入るには、私は歳をとりすぎたからね。これは、お駄賃程度の紅茶だよ。お飲み」

 箱庭に、入る?

 エリカは首を傾げた。
「箱庭に入れるには、少女だけさ。その点、あんたは都合が良かった。なにより、elicaなんて名前だったからね」

「私、今まで箱庭の中にいたの?」

 アリスの言うことがさっぱり分からなくて、エリカは訊いた。
 それでも、やっぱり質問にアリスは答えない。
 黙って、エリカの後ろ上方を指さした。
 そこには、あの、趣味の悪いと感じた、タペストリーがぶら下がっていた。

 ただ、ひとつ妙なのは、前にエリカがそのタペストリーを見た時は虎の絵が描かれていたはずなのに、今はどう見てもかわいらしい猫が描かれている。
 かわいらしい猫が、骸骨の入った鳥籠を抱えてすやすやと眠っているのだ。