あまりにもきれいな歌声に聴き惚れていたものだから、遠くから聞き覚えのある声が飛んできたことに、エリカはまったく気がつかなかった。
 その声はこう叫んでいた。
「いけない、アリス!耳をふさぐんだ!」

 なんてきれいな歌声なの――
 人魚の歌声を聴けば聴くほど、エリカの意識はどんどんと遠のいていった。目がかすみ、足取りも右へ行ったり左へ行ったり、てんでコントロールが効かない。不思議と腕から力が抜けていって――とうとう、エリカは頭蓋骨から手を離してしまった。つるっと手から滑るようにして、頭蓋骨は青々とした芝生の上にぽとんと落ちた。


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