エリカがそのまま看板を超えて進んでしまったのも無理はない。
人影に気づいたのは、その直後だった。沼の端っこに誰か女の人が腰かけているのが見える。
頭蓋骨を大事に抱えたまま、エリカは女の人に一歩一歩近づいて行った。
もしかしたら、”暴れ猫”のことを知っているかもしれない、という期待を込めて、だ。
近づいていくと、腰かけている女の人が人間ではないのが分かった。
腰から下に、本来ならあるはずの足がない。その代わりに、きらきら光るうろこを携えた、魚の半身があった。
それを見たとたん、思わず
「人魚よ!」
と叫んでいた。
その大声に反応して、人魚もエリカに気付いたようだった。にこっと笑い、手招きする。
同時に、人魚は歌を歌いだした。ほれぼれするような透明な声で。
(なんて美しい歌なの!)
それは、「こっちへいらっしゃい、アリス。こっちへいらっしゃい、アリス」とうたっているように聴こえる。
子守唄のようだ、と思った。思わずうとうとしてしまう。
歌につられて、エリカはふらふらと、おぼつかない足取りで沼の方へと歩き出した。
人影に気づいたのは、その直後だった。沼の端っこに誰か女の人が腰かけているのが見える。
頭蓋骨を大事に抱えたまま、エリカは女の人に一歩一歩近づいて行った。
もしかしたら、”暴れ猫”のことを知っているかもしれない、という期待を込めて、だ。
近づいていくと、腰かけている女の人が人間ではないのが分かった。
腰から下に、本来ならあるはずの足がない。その代わりに、きらきら光るうろこを携えた、魚の半身があった。
それを見たとたん、思わず
「人魚よ!」
と叫んでいた。
その大声に反応して、人魚もエリカに気付いたようだった。にこっと笑い、手招きする。
同時に、人魚は歌を歌いだした。ほれぼれするような透明な声で。
(なんて美しい歌なの!)
それは、「こっちへいらっしゃい、アリス。こっちへいらっしゃい、アリス」とうたっているように聴こえる。
子守唄のようだ、と思った。思わずうとうとしてしまう。
歌につられて、エリカはふらふらと、おぼつかない足取りで沼の方へと歩き出した。