こんなことを言われたものだから、エリカの心臓は高鳴り始めた。そんな大事なこと、私に任せていいのかしら?
「うまくいかなかったらどうするの?」
 尋ねると、白鳥先生は胸を張ってこう答えた。
「大丈夫、君に出来ないことはないさ」
「本当に?」
 エリカはそれでも不安で訊き返した。たかだか猫じゃないの、という考えが次第に薄れていっているのがわかる。どういうわけか、怖いのだ。自分が、みんなが待ち続けていた少女であるという重圧から来る怖さなのかもしれない。どこか、心が重い。

「ひとつだけ、気を付けてほしいことがある。何があっても、暴れ猫にこの骸骨のレプリカを奉納するまでは、絶対にこれを手放してはいけないよ」
 そう言って白鳥先生は頭蓋骨を持った両手をエリカの胸元へとまっすぐ伸ばした。
 エリカは大切そうにそれを両手で包みこんだ。
 思ったほどの重さではない。エリカにも充分運べる重さだ。