「ところで、フランス人形君。今更ながら、君のお名前を窺っていなかったね。鳥と違って、フランス人形にはそれぞれの名前があるはずだ」
鳥に個人の名前がなくって、人形にはあるだなんて、本当に変な話ね、とエリカは思った。
「エリカです」
途端、辺りがしん、と静まりかえってしまった。聞こえてくるのは、葉が風にこすれるさわさわという音くらいだ。
「もう一度言ってくれないかね、フランス人形君」
「エ・リ・カ」
「なんてことだ!」
辺りが一斉に歓喜の声で満ち出した。あの知ったかぶりのホオジロもみんなの騒ぐのに合わせてどんちゃん騒ぎをしている。
鶏は周りのわかっていない生徒たちに講釈を垂れ始めた。エリカも喧騒の中、鶏の声を聞き取ろうと必死に聞き耳を立てた。
「エリカっていうのは、スペルがE・L・I・C・Aだろう? これもアナグラムだ。これらのアルファベットを入れ替えると、ほら、ごらん!」
そう誇らしげに叫んで、鶏はすっかり先生気どりになって、黒板に白いチョークで何やら書き始めた。
そこには、A・L・I・C・Eの五文字。
鳥に個人の名前がなくって、人形にはあるだなんて、本当に変な話ね、とエリカは思った。
「エリカです」
途端、辺りがしん、と静まりかえってしまった。聞こえてくるのは、葉が風にこすれるさわさわという音くらいだ。
「もう一度言ってくれないかね、フランス人形君」
「エ・リ・カ」
「なんてことだ!」
辺りが一斉に歓喜の声で満ち出した。あの知ったかぶりのホオジロもみんなの騒ぐのに合わせてどんちゃん騒ぎをしている。
鶏は周りのわかっていない生徒たちに講釈を垂れ始めた。エリカも喧騒の中、鶏の声を聞き取ろうと必死に聞き耳を立てた。
「エリカっていうのは、スペルがE・L・I・C・Aだろう? これもアナグラムだ。これらのアルファベットを入れ替えると、ほら、ごらん!」
そう誇らしげに叫んで、鶏はすっかり先生気どりになって、黒板に白いチョークで何やら書き始めた。
そこには、A・L・I・C・Eの五文字。