「君、僕をここから出すことって、できるかい?」

 自分のことを『僕』というのだから、このカナリアは男の子なのだろうな、とエリカは思った。

「できないわよ。だって私、薔薇だもの」
「薔薇だから何?」
「薔薇だから動けないじゃない」
「動けないから何?」

 エリカはいい加減このやり取りにうんざりしてきた。きっとカナリアだから脳味噌が小さいんだわ! と。

 それにしたって、カナリアがしゃべるだなんて変なはずなのに、どうしたことか、エリカはちっともそれに気付きやしなかった。

 それはきっと、エリカも薔薇でありながらしゃべることができているからだろう。

「動けないから鳥籠を開けることができないのよ」

 ため息をついてエリカは答えた。すると、けろっとした顔でカナリアが尋ねた。

「えっと、何の話をしているんだい?」

――これだから、もう!
 エリカは横にいるカナリアを無視することに決めた。