真っ青な芝生の茂るヨーロッパ風の庭園に、壁が白く屋根が橙色のかわいらしい家が一件だけ建っている。手のひらに乗っかりそうなサイズだ。

 なのにどれも精密に作られている。

 まるで自分が神様になって、天から地球を見おろしているようね、とエリカは思った。自分の作品である地上を見おろす、神の気分。

「面白いだろう?」
 エリカは素直に頷いた。何の気なしに、ほろりとつぶやきが漏れた。

「中に入ってみたいわ」

「入れるとも」

 老婆の素早く、語気の強い反応に、エリカは頭を殴られたような衝撃を覚えた。

――入れるの? この素敵な箱庭に?
 だとしたら、どんなに素敵なことだろう!

「ほんとにぃ?」
 爛々と目を輝かせて、エリカは尋ねた。
 また、意地悪な返答が返ってくるかと思いきや、老婆の口から出たのは、エリカの夢を後押しする台詞だった。

「ほんとだとも」