私がその能力に気付いたのは、小学生何年生くらいのころだったか、確かには覚えていない。
最初に使った時のことは詳しくは覚えていない。
自分でその記憶を消し去ってしまったのか、あるいは自然と忘れてしまったのか、はっきりとはしない。
気付いた時にはそんな能力が私の掌中にあったのだ。
他人が私と同じ能力を持ち合わせていないことに気付いたのも、そのころだった。
「「お前、それやっべーよ!」」
他のクラスメイト達はどうやら記憶を意図的に消すこの能力を持っていないようだ、と。
子供の頃は偏見や差別、いじめの対象としかなりえなかったその能力は、私にとって邪魔以外の何物でもなかった。
「「ずるいことばっかりしてんだろー! ずるすけ!」」
したがって、私の能力を知ってしまった児童たち全員の、私の力に関する記憶を早々に私は消し去った。
痛快だった。
高校生にもなると、これは商売に使えるかもしれない、という思いが私の中では大きくなり始めていた。
そして私は高校卒業後から、おもに政治家や資産家、会社経営者などを相手に、高額の依頼金を課す「記憶消去師」としての道を歩み始めた。
それが、私がこの仕事に就くまでの簡単な経緯だ。
では、具体的にどのようにして人間の脳から特定の記憶を消し去るのか。
それが驚くほど簡単なことで、記憶を消したい相手の首根っこを、消したい記憶を心の中で念じながら、ほんのちょっと力を入れてひっつかむだけなのだ。
たったそれだけの動作のためだけに、人は私に大金をはたく。
まったく、人間とは愚かなものである。
ここまでが、私の仕事の話。
最初に使った時のことは詳しくは覚えていない。
自分でその記憶を消し去ってしまったのか、あるいは自然と忘れてしまったのか、はっきりとはしない。
気付いた時にはそんな能力が私の掌中にあったのだ。
他人が私と同じ能力を持ち合わせていないことに気付いたのも、そのころだった。
「「お前、それやっべーよ!」」
他のクラスメイト達はどうやら記憶を意図的に消すこの能力を持っていないようだ、と。
子供の頃は偏見や差別、いじめの対象としかなりえなかったその能力は、私にとって邪魔以外の何物でもなかった。
「「ずるいことばっかりしてんだろー! ずるすけ!」」
したがって、私の能力を知ってしまった児童たち全員の、私の力に関する記憶を早々に私は消し去った。
痛快だった。
高校生にもなると、これは商売に使えるかもしれない、という思いが私の中では大きくなり始めていた。
そして私は高校卒業後から、おもに政治家や資産家、会社経営者などを相手に、高額の依頼金を課す「記憶消去師」としての道を歩み始めた。
それが、私がこの仕事に就くまでの簡単な経緯だ。
では、具体的にどのようにして人間の脳から特定の記憶を消し去るのか。
それが驚くほど簡単なことで、記憶を消したい相手の首根っこを、消したい記憶を心の中で念じながら、ほんのちょっと力を入れてひっつかむだけなのだ。
たったそれだけの動作のためだけに、人は私に大金をはたく。
まったく、人間とは愚かなものである。
ここまでが、私の仕事の話。