【いずれ私の頭から消すつもりの、陳腐な話】



《ああ、昼間のドラマにもなりえない、あの陳腐な出来事を思い出すと、今でも吐き気がする――》









　彼女のいない生活は、平穏で静かだった。余計な仕事を持ち込んでくる女がいなくなって、これぞ私が望んでいた生活――であるかのように見えたが、実際そんな晴れ晴れとした心持ちなどではなかった。

　やっぱり、なんだかんだ言いながらも私は彼女のことが好きだったのだ。

　こうやって普段通りの、一人の生活をしている間だって、油断するとつい彼女のことを考えてしまう。

　それは、今頃彼女は何をしているのだろう、だとか、ちゃんと仕事はしているのだろうか、だとか、新しい男は出来たのだろうか、だとか、多岐に渡った。

　そうやっていつまで経っても彼女のことを考えている、それこそが、私が未だ彼女のことを愛している証明とも言えた。