もちろん、そんなことを言い出せば彼女がますますお怒りになることは間違いなかったので、言わないことにした。

「もう、知らないっ」

 くるりと踵を返し、彼女は家の玄関へと向かった。

「おい、なんだよ」

 私の言葉を背に、ドアを勢いよく開けて、彼女は出ていってしまった。

 その日きり、彼女が私の家に戻ってくることはなかった。