その方がせいせいする。

 依然として、彼女に対する好意だとか愛情といったものは私の中にはあることにはあるのだが、それも同棲当初のそれから比べれば、薄っぺらいものになり下がっていた。
 この際チャラにしてもいい。

 彼女の中から私の記憶を消去することによって、彼女の分の代金を回収できないというデメリットはあった。



 しかし、それももうどうでもいい。



 私はこちらをにらみ続ける彼女に歩み寄った。そして腕を彼女の首へと伸ばす。

 はっと我に返った顔つきで彼女は私の手を払った。


「やめて、何するの!」


 思いもしなかった力強さで私は跳ね返される。
 それはこっちのセリフだ、と思った。


「今、記憶を消そうと思ったんでしょ。さっきからのこの言い合いを、なかったことにしようとしたんでしょ」