【いずれ私の頭から消すつもりの、よくある恋のような話】


 お互いの部屋を行ったり来たりするうち、私たちは同棲するようになった。

 彼女が私の部屋に、住みつくようになった、という方が私としてはしっくりする言い方だが。


 朝、彼女が私の家から出勤し、夜になると晩飯のおかずを手に抱えて帰ってくる――そんな生活が、私の中では当たり前になり始めていた。

 そんな生活をする一方で、私は私の仕事を続けていた。
 つまり、記憶消去師、あるいは彼女の言うところの”嫌なことイレーサー”としての仕事を。

 同棲しだせば彼女は金を払わなくなるのではないだろうか、という疑いが、一緒に暮らし始めたころの私の心の中にはあったのだが、その心配は杞憂に終わった。

 彼女は毎月毎月、律儀に私に一定額を納め続けている。



 平和で、満ち足りた日々だった。