「まあ、君が何をしても無駄な努力だと思いますよ。……ねぇ? 零」

「……零!?」


暗闇に嘲笑う紡に、双子はビクリと肩を揺らす。

ああ、やっぱり。

セツナとナユタは同時に息を呑み。

直後、そこにある暗闇が微かに風を持った。

二人の予感は現実になったのだ。


「……ハッ……言ってろ、紡。――いや、ココでは“結城”だったか?」


低く攻撃的な声音だった。

刺す様な鋭さを眼鏡の奥の瞳から飛ばし、暗さから姿を現した零は三人のもとへ。

紡は肩を竦め笑った。


「コチラではその名の方が使用頻度高めなんですよ。紛れるには都合が良い」

「……だろうな。つか、コソコソ細工して俺の邪魔すんな。さっきも響声封じの術なんか使いやがって……。どうせ“朝の邪魔”もお前だろ?」

「それはこちらの台詞ですよ」


零の強い視線を無視し、紡は優雅にカップを傾け紅茶を飲む。


「細工も、ああも大雑把で乱暴ともなると……細工者の品性が丸判りで非常に恥ずかしいものですねぇ。手当たり次第、というのがまた節操が無くて美しくない」

「はぁ……!?」


(……ふ、二人とも超こわいよっ! セツナ!)

(しっ……黙ってなさい、ナユタ。今は余計な事言っちゃ駄目)


冷然の静と激高の動。

双子の店主は、両極端の空気の間ですっかり萎縮していた。