セツナとナユタは顔を見合わせた。目で会話を交わす二人は、「どういうことかな?」「さあ……分からない……」とのやり取りの後、紡へ視線を向ける。

疑問を向けられている事に紡は気付いている様だったが、彼は何も答えはせず、しれっと紅茶を味わっているだけ。

セツナとナユタは再び顔を見合わせると、静かに落胆した。


(いっつもこうなんだもん)

(私達はただ指示通り動いてなさいって事ね……)


とはいえ、不安はちょっとでも減らしたい。

二人はおずおずと口を開いた。


「紡……。零はどうする……?」

「花音さん、また来てくれますよね?」

「怖い思いはしてないから、それは平気だと思うけど……」

「だって、あの零さんだよ!?」

「うん。でも、花音……多分よく分かってない。だから」


疑問を紡へ投げかけたまま双子は考える。が、言葉途中でセツナが横目で紡の反応を見た。

カップを置き、軽い溜息を吐く彼に気付いたからだ。

トントン、と人差し指でこめかみをつつき、彼は少々大袈裟とも思えるほど深刻めいた口調で、


「そうなんですよ……。彼女はそこの部分が鈍感で困る。加えて結構好奇心が旺盛ときてますので、対策はキッチリしないと」


と呟いた。

相手も相手ですからね、続けてそう言う紡の目は、セツナもナユタも見ていなかった。

店の奥、明かりもない暗い空間へ真っ直ぐ向けられている。

佇む闇。

何故かその部分だけ他より圧倒的に黒が濃い気もして、紡の視線の先を追った双子は嫌な予感を背中に感じずにはいられなかった。