置かれた紅茶を手にし、彼――紡は香りを楽しみ目を閉じる。口元を柔らかく緩ませるとカップを傾け、


「良い茶葉を仕入れましたね、セツナ。君にはやはりセンスがあるようです」


小さく頷きを。

紡の褒め言葉に、セツナは二重のオッドアイをほんの少し輝かせた。


「……本当?」

「えぇ」

「あー! 美味しそうなにおいー。ボクにも紅茶、ちょうだい!」

「……ナユタ。何してたの? 今まで」


カウンター席に飛びついてきたのは、今日一日お使いとやらに出ていたナユタ。

呆れ顔のセツナに、無邪気顔の少年はニコニコと満面の笑顔だった。そっくり双子とはいえ、雰囲気は対照的な二人。

カウンターを挟んで温度がくっきりと分かれている。


「何ってぇ……お使い」

「ちゃんと出来たの?」

「途中で道迷っちゃった」

「……寄り道してたのね」

「ち、違うよっ? 迷った先に“あれ”があったんだもん。でも、最終的にはちゃんとお使いしたし!」

「……ナユタ。それって……」


溜息吐きつつ紅茶を淹れて。セツナが、何とか言ってくれ、と言わんばかりに紡を見やる。

二人のやり取りに、紡はクスリと笑った。

自分の横に座ったナユタの頭を先程セツナにしてやったように撫でる姿は、さながら保護者の様だ。


「一日よく頑張りましたよ。ナユタも」

「へへっ」

「ミツキの店までちゃんと“取ってこい”が出来た様ですし」

「い、犬じゃありませんっ、ボク」

「どこかでくだらないモノとじゃれついていたのは、少し位大目に見てあげましょう」

「ぅああ……なんでそれを。――あ! えっと、コレ! お使いの品ですっ」