グッと相手の胸元を押し出す。足に力を入れ、手先に抗議を籠めると、結城さんの体は意外にもすんなりと離れてくれた。
「あともう少し、かな……? と思ったんですけど」
「な、な、何がですかっ!」
結城さんの微笑みが意地悪に見えた。すっごい意味深。
なのに……。
それ以上は何も言わずに、けろっと何事もなかった様に「紅茶、お代わり飲みます?」と聞いてくる結城さん。ひどい。やっぱり意地悪。
私は首を振った。こういう時の追求は諦めるしかないって事位は、もういい加減気付いてる。
「いえ。……あの、結城さん」
それよりも、さっき中途半端に終わっている話が気になった。
「ん?」
立ったまま半分に減った紅茶を見、私は結城さんに言った。
「あの子……。お母さんにちゃんと会えます……よね?」
書いて貰った自分の似顔絵を思い出す。
丁寧に描かれた、お母さんの絵も。
笑顔と不安げなあの子の表情を思うと、力になれなかった無力さがどっしりと胸にのし掛かった。
今更……。今更なんだけど。
「…………」
結城さんは、すぐには答えてくれなかった。