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綺麗に整理整頓された部屋。無駄なものが一切無く、緻密に計算された空間演出。

相変わらず結城さんの部屋はモデルルームみたいだった。とても素敵なんだけど、どこか空気がひんやりしてる。それに、ちょっとさみしい感じも。

自分の部屋と何が違うのか……。

考えてみて気付いたのは、気配だ。そう。この部屋、人の気配が極端に少ない。人数がどうという事ではなく、物のひとつひとつに温度を感じないというか……つまり、生活感が圧倒的に感じられない。

だから、彼の部屋はモデルルームの様だったんだ。

展示された間取りが、そのままココへ移ってきたみたいに。


「我が家はそんなに不思議な場所ですか?」


あからさまにキョロキョロしないように……と気を付けていたつもりだけど、結城さんにはバレてしまった。


「えっ」


肩で驚きの返事をした私の前に紅茶を置き、自分はコーヒーを一口口にする。結城さんは目で私に「どうぞ」と紅茶をすすめた。


「仕事が忙しくて自宅にいる時間が少ないですからね。あまり生活感が無くてさびしいものでしょう?」


花音さんの部屋とは違って、と結城さんは笑った。


「貴女の部屋は、とても温かみのある可愛らしいお部屋ですから。同じ一人暮らしでも全く違うモノですよね、本当」

「私の部屋は散らかってるし、細々(こまごま)したものが多いから……。それだけですよ。片付け苦手なんです」

「そうですか? そうは見えませんでしたけど。雑貨選びのセンスも飾り方も、とても良いじゃないですか。あの店にも花音さんの様なセンスが加わるとまた違うんでしょうねぇ」


自分の好きなものを褒められるとやっぱり嬉しい。部屋作りは、誰にも言ってないけど結構こだわっているので尚更だ。

こんなに洗練された部屋に住んでいる人に「センスがいい」と言われるのは、悪い気がしなかった。


「あそこは、あの感じだからいいんです。まっさらで、でも見えない何かが満ちてる……。そうだな、優しい感じ?」

「優しい、ですか」


コーヒーの香りが揺れた。