不味かったのかな? この人に突っかかるの。

でも、なんか強引すぎる気がして胸が痛むんだもん。不安げな子をあえてここで連れ出す必要が、本当にあるのか……もう少し慎重に考えてもいいんじゃない? と思ってしまったのだ。


「それは?」

「え?」

「だから最善策。アンタが考えるソレって何?」

「あ……。だからですね、この子は今までお母さんをここで待ってたんです。いくらこのお店が居心地良い素敵なお店でも、この子は不安を抱えてここに居るんですよ! こんな小さな子が親と離れ離れで知らない所にいる辛さ、分かります?」


いざ話し始めると、自分でも驚く位言葉がポンポンと出て来た。零さんがジッとこちらを見ている事に多少ビクつきながらも、私の口は止まらない。


「でも……ずっと待ってるんです。藤本さんやセツナちゃんが優しくしてくれるから。今外で自分のお母さんを探してくれてる人を知ってるから。だから、不安も怖さも我慢して……。それはこの子なりの、小さな子が頑張ってしてる周りへの気遣いでしょう?」

「………」

「貴方は大人なんですから、もっと周りへ配慮しましょうよ。お母さんの居場所が分かるなら、貴方がここに連れてきてあげてくださいっ。そうすれば、この子は更なる不安を抱えたままにまた違う場所へ移動しなくて済むし、今頃必死で人探ししてくれてる人に対しても失礼が無いと思うんです私! ね? 最善策だと思いません?」


最後は一気にたたみかける様に言ったので、息切れしかけた。

でも、私みたいな迫力のかけらも無い人間でも、ある程度の早口は相手をひるませる位出来るらしい。

零さんは一瞬ポカンとした表情になった。


「このガキ以外にもアイツに配慮しろって?……ウケる!」

「は?」

「アンタって本当面白いなぁ!」


吹き出した零さんは、ケタケタと笑いだす。陽気に笑うと、それまでの人柄が嘘のように相殺された。

コロッと雰囲気が変わるのは、結城さんに負けず劣らずといったところだ。