寂しいに決まってる。
知らない場所でひとり……こんな小さな子なのだ。親とはぐれた寂しさと怖さは、美味しいスイーツでどこまで縮小出来るのだろう。
夢中で食べている姿を微笑ましく見る一方、胸の中には切なさも広がった。
この子は、本当は人見知りする子じゃないのかもしれない。でもそう見えるのは、不安が彼に作用しているせい……とか?
(だとしたら、早くお母さんと会わせてあげたいよね……)
「お待たせ、花音。本日の紅茶はキーモン。スイーツはこちら」
「ええっ! 美味しそうっ」
ところが。
セツナちゃんの持ってきてくれた紅茶とスイーツで、私の中に広がっていた切なさは一気に退散してしまった。
薄いパンケーキが数枚重なり、たっぷりの生クリームとメープルシロップ。苺とブルーベリー、ラズベリーにクランベリーの色鮮やかさ。
キーモンのオレンジ色からは、上品な香り。
真っ白なお皿に乗るスイーツの色に、紅茶の甘い香りに、意識の全部を持っていかれた。
「すごーい! 豪華! 贅沢!」
我ながら、単純というか。この場合は薄情というべきか。
物言わぬ他の三人の視線に、私はハッと現実に戻る。
つい空気も読まず、はしゃいでしまった。
「……あー……ごめんなさい」
「ううん。花音はそれでいい」
「ですね。花音君の幸せそうな笑顔は、とても良いと思います」
「あ。……いや、そこまで言われちゃうと……逆に恥ずかしいですね」
まさかの周りの反応に、照れ笑いでこたえる。男の子の方を見ると、ニコニコ笑っていた。
どこまで意味が分かっているかは謎だけど、様子から受ける感じでは楽しそうにしてるみたい。
少し安心した。