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一度しか通ってない道だ。しかも、記憶では結構入り組んでいたような気がした場所。

迷わず辿り着けるか心配だったけど、それは杞憂に終わりすんなりとお店に来ることが出来た。

案外こういう記憶って、自分が思ってるよりちゃんと残っているものなんだな。昨日の今日なのだから余計かもしれないけど。

フッと短い呼吸をドアの前でした。知らずうち、手に少し緊張が乗る。

ドキドキしてる胸を自覚しつつ、お店のドアを開けた。


「いらっしゃいませ。花音」


今日私を迎えてくれた声は、昨日聞いた声と違っていた。小さい音ながらもよく通る、落ち着いたアルトボイス。


「こ、こんにちは……」


聞こえてきた声に何故か妙に緊張してしまう。静かな店に伝う静かな声は、不思議な威圧感があるのだ。


(ナユタ君じゃない……。女性……)


どんな人が現れるのかと店のカウンター奥に視線を送った。もしかして……ナユタ君が恐れおののいていたオーナーって人?


「ちゃんと会えるのを楽しみにしていたの。まさか、こんな早く会えると思わなかった。うれしい」

「あっ……!」


てっきり声の感じから大人の女性だと思ってた。だから、オーナーさんなのかとばかり……。

ところが、予想に反し声に遅れて姿を現した声の主は、ナユタ君によく似た可愛らしい少女だったのだ。


「はじめまして花音。私はセツナ。ナユタとは魂を分けた双子で、私は妹」


あからさまに驚きを出してしまった私に、セツナちゃんは瞳を細め微笑む。

大人びた色。

幼い少女の容姿とは全く真逆な雰囲気を持つ彼女に、私はちょっぴり戸惑ってしまった。