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昨日の件も謝りたくて、身支度を整えた後に結城さんの部屋を訪ねた。

でも、チャイムを鳴らしても結城さん宅の反応は無くて、「そっか……外出してるんですね……」と独り言だけドアの前に置いてきた私。

――落胆してたんだと思う。そこから足を動かすのが重いっていうのは。

それってやっぱり、結城さんに会いたかったからなんだよね? 迷惑かけた事を謝りたい、なんて……言い訳。

本当は、ただ――。



「じゃあ……どうしようかな」


(もうお昼だし、駅前のファーストフードで軽く食事して……)


歩きながら、私は午後の予定を決めた。お休みなんていつも部屋でゴロゴロしてるんだけど。


(あのお店に、行こう)


路地裏のカフェへ。

細い道の向こう、異国に迷い込んだみたいな雰囲気の静かな場所。

もしかしたら、そこで彼に会えるかも知れないもの。

恐らくあのカフェの常連客であろう結城さんに。

少し歩を速めて、私はマンションを出た。